SDGsでは、目標13に「気候変動に具体的な対策を」を掲げており、温室効果ガスの排出を原因とする地球温暖化現象が招く気候変動や、その影響を軽減することを目指しています。2015年採択のパリ協定において、温室効果ガス排出量削減を目指すことは国際合意されており、旅客輸送では、「移動に自家用車より公共交通機関を使おう」というモーダルシフトの意識は高まっています。
　JR東日本が取り組む「新幹線物流」はヒトの移動だけでなく、モノの輸送（＝物流）のモーダルシフトも推進する施策です。
　国土交通省によると、鉄道旅客輸送の場合、輸送量当たりのCO₂排出量は自動車の約7分の1ですが、鉄道貨物輸送のCO₂排出量は自動車の50分の1以下と、鉄道は非常に環境に優しい輸送モードであることが改めて分かります。物流業界は、トラックなど自動車による輸送の比率が高いですが、鉄道をはじめとする他の輸送モードへの転換や、客貨混載の取り組みなどが推進されています。
　また、CO₂排出量の面だけでなく、社会問題として顕在化している「トラックドライバー不足」への対応という観点からも、物流効率化は喫緊の課題となっています。

新幹線による地産品の輸送で地域と首都圏をつなぐ

　当社は旅客輸送を主な業務としていますが、新幹線による地産品の輸送については、地域の方々から大きな期待を寄せられています。

仙台駅積み込み

新函館北斗駅積み込み

　新幹線は、首都圏と各地域をつなぐ象徴的存在であり、これにより鮮度の良い地域食材が輸送され、提供されることは、地域の生産者と首都圏の生活者の双方にメリットがある仕組みであると考えています。
　現在は、地域の観光ＰＲイベントの一環として活用する機会が多く、少量ですが地域の青果や魚介類などを新幹線の空きスペースに積み込み、輸送しています。

とれたての高鮮度食品を当日中に首都圏に配送

　今はイベントとして活用している新幹線物流ですが、モーダルシフト・物流効率化に向けて輸送事業化するには、いくつかの課題があります。具体的には、他の輸送モードと比べて荷量が限られていることや、生産地から発駅までのファーストワンマイル、着駅から販売箇所までのラストワンマイルの担い手問題などが挙げられます。新幹線ダイヤを前提としているため、柔軟な輸送計画が立てづらい点もトラックには劣ります。
　一方、トラックでは難しい「とれたての高鮮度食品を、当日中に首都圏配送できる」という新幹線ならではの強みがあり、他の輸送モードとの差別化については、大きな可能性があると考えています。

羽田市場食堂［グランアージュ（東京駅）］にて、8月に期間限定で提供された海産物（上）と生カキ（下）

　今後のビジネス化に向け、現在は、輸送ニーズがある商材の選定や、首都圏における販売者のコーディネート、輸送計画の策定などを都度行い、トライアルを積み重ねています。
　これからも、私たちJR東日本グループは、地域産品と新幹線の新たな可能性に挑戦していきます。

［ 報告者 ］
中川 雄介
JR東日本 事業創造本部
新事業・地域活性化部門
地域活性化グループ 主席