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セルフレジ導入とキャッシュレス化が小売店を救う<br>貨幣のゆくえ④

2020年に高輪ゲートウェイ駅に開業した無人決済店舗の1号店

セルフレジ導入とキャッシュレス化が小売店を救う
貨幣のゆくえ④

キャッシュレス化は、企業にとって効率化を促す手段でもある。特にコンビニなどの小売店では、セルフレジや無人決済システムの導入により、大きな成果を得ているという。

無人決済システムで労働力不足を解決する

 株式会社TOUCH TO GO(以下TTG)は、無人AI決済店舗システムの企画・設計・開発・販売などを展開している会社だ。「JR東日本スタートアップ」と、金融機関・公共機関に向けたシステムコンサルティングを主としている「サインポスト」が共同で出資をして、2019年に設立された。そのシステムは、TTG自身がJR高輪ゲートウェイ駅に出店する無人決済店舗「TOUCH TO GO」で体験することが可能だ。
 客が店舗に入ると、カメラやセンサーが人物の動きや手に取った商品を捕捉。買い物後は会計ゾーンに立てば、自動で明細が表示され、現金、交通系ICカード、クレジットカードなどで支払いをする。顧客対応が必要になる場合に備えてバックヤードには店員が1名控えており、コールセンターも設置されてはいるが、基本的に客は非対面・非接触で買い物を済ませることができる。

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 TTGの阿久津智紀社長は、JR東日本からJR東日本スタートアップに出向し、スタートアップの共創プログラムを手掛けてきた人物だ。サインポストとはそのプログラムの中で出合い、同社が画像認識技術などを用いた無人決済システムの開発に取り組んでいることを知り、「ぜひこれを実現したい」と考えたという。そこで17年には大宮駅、18年には赤羽駅に実証実験用の店舗を設置。徐々にシステムの精度を上げていった。そして前述のように19年に会社を設立し、翌年高輪ゲートウェイ駅に1号店をオープンさせた。

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阿久津 智紀
株式会社TOUCH TO GO 代表取締役社長

 「私がこの事業に引かれたのは、私自身がJR東日本に入社後、JRグループのコンビニで店長を務めた経験が大きかったと思います。アルバイトの人手が足りず、店長自身が長時間レジに立たなくてはいけないという経験を何度もしてきました。店舗の省人化に関するソリューションは、小売業者や飲食業者、サービス業者が切実に求めているものです。私たちのシステムを提供することで、そうした業界の課題解決に貢献していきたいと考えています」
 しかも今後の日本社会は、労働力不足がより深刻になっていくことが確実視されている。事業者が今と同じレベルのサービスを維持することが、困難になる時代が来るかもしれない。「そうなる前に先手を打っておく必要がある」という思いが、阿久津社長にはある。
 TTGのシステムには、既に多くの事業者が強い関心を示し、実際に導入も進んでいる。中でもファミリーマートは、TTGと資本業務提携を結んだ上で、24年度末までに1000店舗の無人決済店舗の出店を打ち出している。
 TTGも、社会のニーズに応えるために、事業スピードをさらに加速させていく予定だ。

NewDays セルフレジ導入で「人でしかできない」業務に注力

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NewDays JR南新宿ビル店

 ニューデイズにセルフレジが初めて導入されたのは2007年のこと。当初の目的は朝の通勤時間帯のお客さまのイライラ解消であった。当時、会計待ちの行列が店舗の外まで溢れていたが、釣り銭が発生しないSuicaという新たな決済手段を使ったセルフレジは、会計時間を大幅に短縮させた。同時に、今まで行列を見て入店を諦めていた利用客の取り込みも図れた。
 しかしながら当初は認知が高まらず、利用が低迷する店舗も多かった。利用率の低さからせっかく導入したセルフレジを撤去する店舗もあった。
 その後、急速に進む働き手の不足を背景に、大手スーパーや他のコンビニチェーンでも導入が始まる。継続した利用促進キャンペーンの効果もあり、ニューデイズでのセルフレジの利用率と設置台数は拡大の一途をたどる。これによりスタッフは品出しや案内、発注などの「人でしかできない」業務に注力できるようになった。セルフレジの浸透は、有人レジなしの「オールセルフレジ店舗」や、スタッフ不在の「オフィスキオスク」のようなイノベーションも生んだ。

利用者の半数超がセルフレジの店舗も

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NewDays JR南新宿ビル店には、写真のキャッシュレス決済専用セルフレジ2台に加え、現金も使えるセルフレジ2台が設置され、有人レジなしの「オールセルフレジ店舗」となっている

 コロナ禍における非接触ニーズの高まりを受け、今年度からニューデイズはさらなるセルフレジの強化にかじを切った。「キャッシュレス&スピーディ」と銘打ち、有人レジ1台、残りは全てセルフレジという「省力化店舗」を全店の約3分の1にあたる150店舗に拡充するそうだ。同時に昨夏~秋にかけ、利用促進キャンペーンを波状的に実施。駅頭で「セルフレジ利用で5%オフ」の声を聞いた方も多いのではないか。その結果、セルフレジ利用率は大手コンビニチェーンを大きく上回り、利用者の半数を超える店も多い。
 現金のやりとりがないセルフレジは、いまや人手不足解消、生産性向上のために欠かせない存在となっている。また、今後は「JRE POINT」会員の拡大により、更なるキャッシュレスの進展が見込まれる。

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