ビューカードでは利用者のライフスタイルに合わせ、さまざまなカードを発行している
ビューカード
Suicaと連携した便利なクレジットカードを提供
JR東日本グループにおいてクレジットカード事業の専業会社として設立されたビューカード。
サービスを進化させ、成長を続ける同社の事業内容について紹介する。
Suicaとの連携で独自の価値を提供してきた
JR東日本がクレジットカード事業を開始したのは1993年のこと。株式会社ビューカードは、そのカード事業を専業で行うために2009年に設立し、翌年2月より事業をスタートさせた。
会社設立後、順調に成長を遂げ、20年度についてはコロナ禍の影響で足踏みがあったものの、会員数は会社設立時から1.5倍の約569万人、取扱高も1.6倍の約1.7兆円(20年度ベース)となった。またこの間、「ビュー・スイカ」カードなどの既存サービス拡充に加えて、「ビューゴールドプラスカード」や「JRE CARD」の発行を開始するなど、ラインアップの充実にも力を注いできた。新井健一郎代表取締役社長は、同社の成長の理由を次のように語る。
「まず、社会全体のキャッシュレス化が進行したこと。そして当社のクレジットカードは、Suicaのオートチャージ機能(※)が付いていることをはじめとして、Suicaとの連携を図ることで、他社にはない独自の価値を提供できていることが大きいと思います。結果、特に普段から鉄道をご利用されている方より、高い支持を得ることに成功しました」
※Suicaの残高があらかじめ設定した金額以下になると、改札を通る時(入場時・出場時)に自動的にチャージされるサービス
新井 健一郎
代表取締役社長
ただし新井社長は、同社が引き続き成長を続けていくためには、新たな手立てを講じていく必要があると考えている。日本社会の人口減とともに、コロナによる影響も受けており、今後は鉄道利用者の減少は避けることができない。鉄道や駅を利用するときに便利なカードであるとともに、生活のあらゆるシーンで選ばれるカードになるための魅力づくりを図っていくことが求められる。
「私どもはお客さまのことをもっと知ること、理解することが大事だと思っています。これまでもさまざまな生活シーンでビューカードをご利用いただいていますが、会員のお客さまにビューカードを通じて、さらに豊かな生活をエンジョイしてもらうための提案をしていきたいと思います。そのためのツールがデジタルマーケティングです。お客さまの購買履歴に基づき、お一人お一人にきめ細かなサービスのご提案ができる体制を整えていきたいと思っています」(新井社長)
ポイント付与率アップでゴールドカード会員が増加
特に21年は、ビューカードの魅力度向上という点で、大きな変化のあった年となった。JR東日本でビューカードを利用した際に、通常よりも多く「JRE POINT」が貯まる「VIEWプラス」のサービスを7月に改定。一律1.5%だった付与率を、利用するサービスやカードの種類によって、異なる付与率を適用することにしたからだ。例えば「えきねっと」で新幹線eチケット(指定席)を「ビューゴールドプラスカード」で予約時決済し、チケットレス乗車した場合、8%のポイントが付与され、さらに「えきねっと」を利用したことで2%が付与されるため、付与率は合計10%となった。
「VIEWプラス」は、JR東日本の対象のサービスをビューカードで利用すると、JRE POINTが通常の0.5%よりもポイントアップするサービス。2021年7月の改定により、例えばゴールドカード(※1)だと上記のポイント付与率となった。
※1 ゴールドカードとは「ビューゴールドプラスカード」「JAL カード Suica CLUB-A ゴールドカード」を指す ※2 ゴールドカードで「えきねっと(JR券予約)」を利用し、予約時決済した場合のポイント付与率 ※3 ゴールドカードでモバイルSuicaを利用した場合のポイント付与率 ※4 「えきねっと」にて新幹線eチケット(指定席)を購入し、チケットレスで乗車した場合のJR東日本のポイント付与率 ※5 モバイルSuicaにてモバイルSuicaグリーン券もしくはモバイルSuica定期券を購入した場合のJR東日本「鉄道利用で貯まるJRE POINT」の付与率
※ポイント付与の詳細は https://www.jreast.co.jp/card/point/save/viewplus.html
同社が発行している「ビュー・スイカ」カードの年会費が524円(税込)であるのに対して、「ビューゴールドプラスカード」は年会費1万1000円(税込)と高額だが、顧客戦略部の有動佑希主席は「付与率がアップしたことで、『ビューゴールドプラスカード』を持った方がお得になると感じられるお客さまが増え、お申し込みが大幅に増加しました」と語る。
営業本部 顧客戦略部
営業推進グループの有動佑希主席
そこで同部では、7月の「VIEWプラス」の改定に合わせて、「ビューゴールドプラスカード」の会員数を増やすためのキャンペーンを実施。その際、「お客さまへの告知手段として、発送先や内容を厳選したダイレクトメール(DM)を大いに活用した」(有動主席)という。
具体的には「ビュー・スイカ」カードの会員の中から、今後「ビューゴールドプラスカード」に切り替えた方がメリットのある会員を、カード利用履歴を元にセグメントした上でDMを送付。またDMの内容についても工夫を凝らした。
「9月の定期券の購入や12月の帰省など、年間のどんな時期にカード利用が発生して、どれぐらいお得になるかを、具体的にシミュレーションした図をDMの中に載せました。お客さまに自分ごととして実感していただくというのがその狙いです」と同部の的場遼平主席は語る。
営業本部 顧客戦略部
営業推進グループの的場遼平主席
またDMとともに、オンライン広告による告知も積極的に展開。キャンペーンの反響は上々で、新規獲得会員数は19年度と比較して約4倍の伸びになったという。
ECサイトの利用促進でカードの利用場面を増やす
同社はルミネで5%や10%オフとなるルミネカードやアトレなどの駅ビルで3.5%の「JRE POINT」が付く「JRE CARD」など特徴のある提携カードがある。同社では、リアルの店舗でのご利用だけではなく、JR東日本グループのECサイト「JRE MALL」や同社の「VIEWショッピングステーション」というポイントモールをはじめとした、会員のECサイトの利用促進にも力を入れており、「JRE MALL」でビューカードを使って買い物をした場合には、「JRE POINT」が3.5%付与される。
また21年3月からは、通販大手の株式会社千趣会との協業サービスを開始。同社が運営するネット通販「ベルメゾン」で、ビューカードを使って決済を行った場合、「JRE POINT」が通常の2倍付与されるサービスなどを行っている。加盟店ソリューション部の藤代奈美副課長は次のように語る。
営業本部 加盟店ソリューション部
加盟店営業グループの藤代奈美副課長
「当社が発行している『ルミネカード』は、20代から30代前半までの若い女性から高い支持を得ていますが、女性の中には出産や子育てなどで環境が変わると、通勤で駅を使わなくなり、ルミネを利用する機会が減る方もいらっしゃいます。けれども、なかなか外出することが難しい間も『ベルメゾン』を活用していただければ、カードの継続的な利用が実現します。そういう意味で、千趣会と業務提携ができたのは非常に大きいと思います」
同部では、今後も「JRE MALL」や千趣会と連携しながら、多くの会員にサービスを知っていただくために、利用促進キャンペーンを随時実施していく予定だ。
※記載の値は2019年度末時点の状況
※2020年9月16日JR東日本・千趣会ニュースリリースより引用
アプリの開発では速さとシンプルさを追求
ビューカードの魅力度向上のためには、ユーザビリティを高めていくことも重要になる。そこで同社では21年8月より、会員向けのスマートフォンアプリ「ビューカードアプリ」の提供を開始。これはカードの利用明細や利用可能額、「JRE POINT」残高の他、Suica機能付ビューカードを利用している会員については、Suica残高もスマートフォンで確認できるというものだ。
速さにこだわった「ビューカードアプリ」。機能はシンプルにとどめながらも、利用額、利用明細の内訳が確認できる他、利用状況もグラフですぐに分かるようになっている。また、Suica機能付ビューカードにスマートフォンをかざすだけで簡単にSuicaの残高確認が可能。さらには、アプリの利用に応じてプレゼントがもらえるなど、利用者にとって必要十分なものとなっている
開発を担当した営業統括部の米野井佑記主席は、「ウェブで利用明細などを確認するときとの大きな違いは、動作が速いこと。アプリは速さが命ですから、そこに一番こだわりました」と語る。
一方で機能はシンプルなものにとどめることを心掛けた。当初さまざまなコンテンツ案が出ていたが「本当に会員さまが求めている機能は何か」を検討する過程で、そうした付加サービスは削ぎ落としていったという。
「おかげさまでアプリについては、『動作が速い』『機能がシンプル』『デザインが見やすい』といった評価をいただいています。今後、新たなサービスを加える場合にも、お客さま起点で考えることを大切にしていきたいと思います」(米野井主席)
営業本部 営業統括部の米野井佑記主席
システムと人間がタッグを組みカードの不正利用を防ぐ
ビューカードが今後も顧客から支持されるクレジットカードであり続けるためには、セキュリティ面においても安心・安全が確保されていることが条件となる。同社ではセキュリティ管理部が、24時間365日体制でカードの不正利用に目を光らせている。和田晃一担当部長は語る。
「不正利用には、AIを含むシステムと人間がタッグを組んで臨んでいます。膨大なカード決済の中から、不正利用が疑われるケースをまずシステムが検知。すぐさま人間の目で確認して、不正利用の可能性が濃厚だと判断した場合は、取引を緊急停止。会員さまにお電話などで連絡を差し上げ、お客さまご自身のご利用かを確認しています」
セキュリティ管理部の和田晃一担当部長(セキュリティグループリーダー)
近年の不正利用は、フィッシングサイトでカード番号を入手する手口が主流を占めている。そこで同部では外部の専門会社に任せるだけではなく、自分たちでもフィッシングサイトの早期検知に取り組み、見つけた場合は速やかに閉塞対応(サイトを閉じること)を行ったり、ビューカードを装ったなりすましメールを排除するためにDMARC(送信ドメイン認証)に対応するなど、最新のセキュリティ対策を実施しているという。和田担当部長が目指しているのは、「ビューカードのセキュリティを業界最高水準にすること」だ。
新井社長は「さまざまな能力を持った社員が在籍しているのが当社の特長です。多様な社員が、『お客さまオリエンテッド』という点で一致して取り組んでいます」と語る。
同社は時代が変わっても、顧客から魅力的だと感じてもらえるカード会社であり続けることで、今後の飛躍を図ろうとしている。