
青梅線・白丸駅がホテルのフロントに。スタッフのお出迎えでチェックイン。「無人駅からはじまる、源流への旅」がスタートした
JR東日本グループTOPICS
新しい旅、地域のあり方を導く「沿線まるごとホテル」
沿線地域を一つのホテルに見立てた「沿線まるごとホテル」が、新たな滞在型観光として注目を集めている。今回は、その取り組みを紹介する。
過疎化する沿線を活性化するために誕生
「沿線まるごとホテル」を展開するのは、JR東日本と全国各地で地域活性化やビジネス創出を支援している株式会社さとゆめが、共同出資で設立した沿線まるごと株式会社。事業誕生の背景には、地方都市や農山漁村の過疎化がある。過疎化による人口減少は、駅や駅周辺の魅力と価値向上に取り組むJR東日本グループにとって大きな課題。加えて、今般のコロナ禍による地域への送客量減少という事態にも見舞われている。そうした中、JR東日本スタートアップ株式会社が展開する「JR東日本スタートアッププログラム2020」で、さとゆめが「沿線まるごとホテル」を提案。プランは採択され、沿線活性化を目的に同サービス開発が始まった。
事業化のための実証実験の舞台として選ばれたのはJR青梅線沿線。沿線の自治体、地域住民や事業者を巻き込んで行われた。特に青梅駅─奥多摩駅間は「東京アドベンチャーライン」という愛称が付けられており、駅を降りたら本格的な自然やアウトドアが楽しめる場所として人気を得ている。

旅のしおり(左)とサービスチケットなど(右)
「沿線まるごと」で訪れる人をもてなす
21年2〜4月の実証実験では、「1つの鉄道(青梅線)、2つの駅(白丸駅、奥多摩駅)、3つの集落(奥多摩町白丸集落・境集落、小菅村中組集落)」が楽しめる体験・宿泊プラン「無人駅からはじまる、源流への旅」を提供した。目玉は、無人駅チェックイン・集落ホッピング(※1)・沿線ガストロノミー(※2)・古民家ステイの4つ。沿線まるごとホテルでは、JR東日本の駅舎や鉄道施設を「ホテルのフロント」に、沿線集落で空き家となっている古民家を改修して「ホテルの客室」に、さらに地域住民を「ホテルのキャスト」に見立てている。
※1 複数の場所を巡ること
※2 ガストロノミーは料理を中心として芸術、歴史、科学、社会学などさまざまな文化的要素を考える総合的な学問のこと。旅行に関連しては、その土地ならではの食や自然・文化を楽しむことを指す


このときは「白丸駅」がフロントとなり、ホームではホテルのコンシェルジュがお出迎え。チェックイン後は、送迎車で宿泊地となる奥多摩町の隣村・山梨県小菅村にある築150年の邸宅を改装した古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」に向かった。移動の間、多摩川の景観や史跡など、いくつかの集落をホッピングし、参加者はマイクロツーリズムを堪能。食は地元の食材を使い、メニュー開発には沿線の生産者も関わった、コース料理が饗された。プランは予定を20日間延長するほどの人気で、実証実験は大成功を収めた。
22年2月には、2回目の宿泊プランとして奥多摩駅スタートの「奥多摩発 五感をひらく、源流への道」を提供。申し込みが相次ぎ、高い稼働率を見せた。宿泊は前回同様「NIPPONIA 小菅 源流の村」だったが、今後は青梅線沿線の古民家を順次改装、開業していく予定だ。26年までに全5〜8棟の稼働を目指している。

「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、"700人の村がひとつのホテルに"をコンセプトにした、村ぐるみで運営する分散型古民家ホテルで、さとゆめがプロデュースした
"ヒト"を起点に地域事業の拡大を目指す
沿線まるごとホテルの目的は、地域住民をはじめ、自治体や地元企業と協力しながら、JR東日本グループとさとゆめが伴走する"ヒト"起点による地域事業の拡大。その中で、地域事業を担う地方創生人材の育成にも力を注いでいく。
"ヒト"を起点に、過疎高齢化が進む沿線地域の魅力を掘り起こし、高付加価値サービスを創造する。現在は青梅線での展開だが、他路線での展開も念頭に置いてノウハウの構築が進められている。
INFORMATION
「沿線まるごとホテル」の最新情報を発信しています。
https://marugotohotel-omeline.com/