和田由貴 わだ・ゆうき
節約アドバイザー
消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、暮らしや家事の専門家として多方面で活躍。また、環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートでもあり、環境問題にも精通する。メディア出演、『月3万円貯まるムダなし生活術』(永岡書店)など、著書多数。
カルチャーコラム
和田由貴さん
無理せず楽しくストレスフリーな節約を
円安や新型コロナウイルス感染症拡大などの影響を受け、食品、日用品、ガソリン、電気、ガスなど、さまざまな分野で値上がりが続いています。物価高騰が家計を直撃する中、ストレスなく楽しく節約する極意を「節約の達人」和田由貴さんに伺いました。
「生きたお金」を使うための手段
節約って誤解されやすいんです。「我慢」「ケチケチ」などマイナスイメージで捉えている人も多いと思いますが、実は、使うべきところにしっかりお金を使うためにムダな部分を省くという行為です。
例えば、朝寝坊をしてタクシーに乗ったとします。このタクシー代は自己管理ができていれば必要なかったわけですから、いわば「死に金」。一方で、タクシー代を使わずに、そのお金でおいしいランチを食べて、有意義で充実した時間を過ごせば、これは「生きたお金」の使い方と言えます。
節約は目的ではありません。暮らしや心を豊かにする「生きたお金」を使うための手段です。それが分かればストレスなく、楽しく節約することができます。
継続するために節約体質になる
節約する上で大事なのは、継続すること。そのためには意識を改めて節約体質になる必要があります。ポイントを四つ挙げましょう。
一つ目は「金額を動機とする買い物をしない」こと。例えば、夕方スーパーに行ったらお刺身が半額になっていたので購入。そんな経験はありませんか。お得に賢い買い物ができたと感じるかもしれませんが、そのお刺身は値引きされていなければ買わなかったものです。つまり、本来は必要のない買い物といえます。ほかにも、あと1000円買うことで送料が無料になるからなどの理由で、不要な買い物をしていないでしょうか。本当に必要なモノか、今一度立ち止まりましょう。
二つ目のポイントは「貯蓄は先取りする」。節約してお金が余ったら貯蓄しようと考える人も多いですが、お金はまず余りません。貯蓄用のお金は先取りし、かつ財形貯蓄や定額預金など解約しにくいところに置きましょう。モノもお金も使いにくい場所に置くと消費が減ります。
三つ目は「あったら便利なモノはなくても平気」ということ。100円均一ショップやディスカウントストア、ドラッグストアに行くと、あれば便利そうなグッズがたくさん並んでいます。ですが、これまでない中で生活していたのですから、なくても大丈夫なはず。特に安いモノは予定になくてもつい買ってしまいがちですが、ちりも積もれば、です。目的なくこのようなお店に立ち入らないのも、ムダを省くコツです。
四つ目は「ハードルを上げすぎない」こと。100万円貯める、食費を半分にするなど、目標が高過ぎると挫折します。継続するためには、まずハードルを低く設定すること。毎日缶コーヒーを買ってしまうのであれば、そこからやめてみるなど、日々のちょっとした習慣を変えることで無理なく続けることができます。
節約体質になるポイント
①金額を動機とする買い物をしない。安いからという理由で不要なモノを買わない。
②貯蓄は先取りし、使いにくい場所に置く。
③あったら便利なものはなくても平気。買わない。
④ハードルを上げ過ぎない。まずは身の回りの小さなことから。
見直しは金額の大きい固定費から
では、節約生活をするために、どこから手を付ければよいのでしょうか。
食費などの節約がまず思い浮かぶかもしれませんが、最も効果的なのは固定費の見直しです。固定費は1度見直せば効果が継続します。額も大きいので、ぜひお勧めしたいのですが、固定費の節約は「面倒くさい」のと「思い込み」で、一歩踏み出せない人が多く、残念です。
例えば通信費。スマホ代は大手キャリアのオンライン専用プランやMVNO(※)に乗り換えれば劇的に節約できますが、キャリアの比較や、契約・解約が「面倒くさい」、今の端末が利用できなくなる、家族割引サービスで十分安くなっているなどの「思い込み」で見直しを検討しない人が多いようで、これは本当にもったいないことです。
ほかにも保険料は毎年のライフステージに合わせて見直す、持ち家がローンならば、その借り換え、繰上返済等を常にチェックする、賃貸なら更新の際に家賃や更新料の値下げを交渉するのもよいでしょう。言うだけならタダですから(笑)。
日々の買い物では現金よりも、履歴が残り、ポイント還元等のあるキャッシュレス決済がお勧め。つい使い過ぎてしまうという人は、月々のチャージ金額の上限を決めたり、用途によって使用するサービスを変えるなどのルールを決めておくとよいでしょう。
また、さまざまな分野に広がっているサブスクリプションは、購入を検討している家具や家電の試用期間として利用すると便利です。購入前にじっくり試すことで、「こんなはずじゃなかった」という失敗を防げます。
物価の高騰はまだまだ続きそうです。ストレスなく節約して、「生きたお金」を楽しく使えるようにしたいものですね。
※ Mobile Virtual Network Operatorの略称。周波数の割り当てを受けている事業者のインフラを借り受け、音声通信やデータ通信のサービスをリーズナブルな料金で提供する事業者のこと