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JR東日本ネットステーション<br>人々の暮らしを豊かにし、社員の自己実現もはかる

「とらんくまーと」の運営メンバーとえきねっとサイトご案内キャラクター「とらんくま」

JR東日本ネットステーション
人々の暮らしを豊かにし、社員の自己実現もはかる

JR東日本グループで「えきねっと」「JRE MALL」などの運営管理を行う株式会社JR東日本ネットステーション(JRNets)は、2022年12月、JRE MALL内に自社直営店「とらんくまーと」を開設した。その狙いについて探る。

えきねっと&JRE MALLの運営管理を担う

 東京・渋谷区千駄ヶ谷に本社を置く株式会社JR東日本ネットステーションの設立は、2000年3月のこと。国内で異業種によるネット通販事業が続々と登場する中、JR東日本のオンラインショッピングモール「えきねっとショッピング」の運営事業者として設立された。その後、えきねっとショッピングはリニューアルし、指定席券予約サービスおよび旅の情報などを提供するインターネットサービスへと刷新。18年には新たなショッピングモール「JRE MALL」も開業した。
 現在、同社は、えきねっとおよびJRE MALLの運営管理のほか、JR東日本およびグループ各社WEBサイトの制作運営業務、えきねっと関連の問い合わせ窓口となるカスタマーセンター業務を担う。これらの業務は、えきねっと事業推進部&えきねっと業務管理部、EC事業部、ITソリューション部の主要3部門、そして本社外に置かれたカスタマーセンターによって支えられている。

お客さまとJR東日本グループを安心・確実につなぐ

 主に4つの事業の柱がある同社だが、特に近年はEC事業が堅調だ。EC事業部の人員もここ数年で倍増傾向にあるという。
 他方、コロナ禍に端を発する旅行・出張需要の冷え込みとともに、えきねっと事業は大きな影響を受けた。加えて、21年8月には柱の一つであった、えきねっとポイント事業が 「JRE POINT」との共通化によって終了。新たな収益源、そして収益を生み出していく人材の確保が最重要課題となっていた。
 「ポストコロナを見据えた抜本的な経営変革が求められています。特に今年度は、『高い意識と高いスキルで、高い価値を創り上げることにこだわろう』というテーマを掲げ、各事業のお客さまを意識した新たなサービス創造に取り組んでいるところです」
 そう語るのは、取締役 企画部長の古田隆則さんだ。例えば、えきねっと事業では自社広告媒体を利用した増収施策や、MA(マーケティングオートメーション)ツール(※)を活用したOne to Oneマーケティングの深度化・収益化を推進している。

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取締役 企画部長
古田隆則さん

 「グループの中で当社が求められているのは、お客さまとJR東日本グループを安心・確実につなぐこと。社会的なDXの要請も高まっています。その実現のためにも最先端のデジタル情報を常にキャッチアップし、グループ内外に提供していくことが、当社の役割です」と古田さんは話す。

※獲得した顧客の情報を一元管理し、主にデジタルチャネルを通じたマーケティング活動を自動化することで業務の効率化、生産性向上を図るツール

JRE MALLの直営店「とらんくまーと」とは?

 EC事業部が管轄しているJRE MALLでは、同社成長戦略の一つとして新たな取り組みを始めた。22年12月、JRE MALL内に直営店として開設された「とらんくまーと」だ。

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「JRE MALL」内にある「とらんくまーと」のトップページ

 JRE MALL自体はJR東日本とJR東日本ネットステーションが共同運営するショッピングモール。開業以来、鉄道グッズやSuicaのペンギングッズ、各地からの厳選したお取り寄せ商品などを提供するほか、サイト内ではグループ各社の直営店も数多く出店している。しかし、「そうしたECにまつわるせっかくの知見・ノウハウがあっても、MALLの運営業務の中でしか活かせていないのがもったいない」と話すのはEC事業部長の宮内博さん。
 「それはEC事業部だけではなく、他部門も同様です。当社にはITスキル・デザインスキルを持った専門人材が大勢集まっています。彼らの力を活かさない手はありません」

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EC事業部長
宮内博さん

 例えば、「キャンペーンの告知チラシやバナーを作りたいけどそのスキルがない」と困っている人がいる。そうした場合の助力となるサービスを、「とらんくまーと」で出品すれば、サイト自体の魅力を向上させ、同社が自ら利益を生み出す新たなビジネス機会、何より人材育成につながっていくのではないか......。「とらんくまーと」は、そんな考えの下でスタートした。
 取り扱う商材・サービスを企画する実行部隊は22年6月に社内で公募。現業との兼務とされたが、これまで13名が参加した。
 「『販促グッズとWEBスキルであなたの"困った"をお助け!』──それが初期メンバーで考えたコンセプトです。当社の強みは何といっても、ECで商品企画・制作・販売までワンストップで行う知見があること。そしてWEB制作で培ったデザイン力・スキルを持っていること。まだ発足間もないため出品数は限られていますし、現在の主な利用者はJR東日本グループが中心となりますが、これから私たちの強みを最大限活かし得る商材を拡充していくつもりです」と、「とらんくまーと」の全体進行・収支計画作成を担当するEC事業部サブリーダーの能登屋詠美さんは思いを語る。

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EC事業部 サブリーダー
能登屋詠美さん

自ら創造したビジネスで売上・収益を上げていきたい

 企画のアイデアは常に「メンバー各々のやりたいこと・できること」を起点としながら、「何がビジネスになり得るか」「何がお客さまの持つ課題の解決になるか」を議論する。メンバーはお互いの強みを活かせるよう「部門横断型」で編成し、その後の運営も基本的には裁量に任されている。ゼロから新しい事業を創造していくのに等しい活動に、参加メンバーは「普段は絶対に巡り合えない新しいことにチャレンジできている」と口をそろえる。

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「メンバー各々のやりたいこと・できること」を起点にお客さまに役立つサービスを考えていく

 実際に「とらんくまーと」にはどのような商材やサービスが出品されているのか。
 EC事業部の降籏研人さんと、えきねっと事業推進部の吉田紀子さんは、自分たちが得意とするデザインスキルを活かし、「オリジナルキャラクターで作れるノベルティ&販促グッズ(ふせん・ボールペン・クリアファイル)」を企画した。

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「とらんくまーと」で作成可能な「オリジナルキャラクターで作れるノベルティ&販促グッズ」のサンプル。プリントされているのは、えきねっとサイトご案内キャラクター「とらんくま」

 出品後は実際に、JR東日本長野支社からの注文を受け、長野駅オリジナルキャラクター「ながも」のクリアファイルとふせんを製作。グッズに付与された二次元コードをスマホで読み取れば、キャラクター紹介ページに遷移される独自性も施し、その制作もサービスに組み入れた。
 イベント当日は、駅が主催するウォーキングイベントでコースマップをクリアファイルに挿入し参加者に配布。長野支社のSNSをフォローした人には特典としてふせんが配られ、主催者・参加者に大好評だったという。
 「せっかく自分たちで立ち上げたビジネスですから、まずは売上・収益が第一。そのために目下目指すのは、ノベルティをつくりたい方の第一候補が『とらんくまーと』になるように認知を広げることです」と降籏さん。

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EC事業部
降籏研人さん

 これを受けて、吉田さんは次のように話す。
 「今はふせん・ボールペン・クリアファイルに限定されていますが、もっとアイテムの種類を増やし、さまざまなお客さまのニーズに応えていきたいですね」

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えきねっと事業推進部
吉田紀子さん

 一方、「とらんくまーと」に「はじめてのPhotoshop講座」を出品したのは、EC事業部の大久保明子さんとITソリューション部の小森康寛さんだ。
 講座のカリキュラムは全2回・計4時間の短期集中型で、1回目はPhotoshopの基本操作、2回目はチラシやバナー制作の実務を教える。カリキュラムはユーザー検証を繰り返しながら自ら策定し、講座の講師役も大久保さんと小森さんが務める。
 「私はEC事業部でデザイン制作を担当していますが、時として出品者からいただく画像データのクオリティーが高くないなど、リテラシー面に課題を感じることがあります。こうした講座を広げていくことはJRE MALLの魅力向上にもつながるはずです」と大久保さん。また、この講座を開発したことによって、自身の日頃の業務工程を見直すきっかけにもなったという。

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EC事業部
大久保明子さん

 小森さんは、「まさか自分が仕事の中で講師役を務めることになるなんて思ってもいませんでした」と笑う。
 「ですが、自分の人生で培ってきたITスキルをビジネス化できたことは誇らしいです。この経験を通じ、モノを売ることへの意識も強くなりました」(小森さん)

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ITソリューション部
小森康寛さん

人材育成の場としての「とらんくまーと」への期待

 「とらんくまーと」は、その立ち上げからまだ1年足らず。経営の柱になり得る収益化には至っていない。しかし、大友信介代表取締役社長は、人材育成の場としての「とらんくまーと」に期待している。
 「『とらんくまーと』では社員一人ひとりが通常業務を離れ、新しいビジネスの下、企画から商品化、販売促進、さらにはデータ分析までの全てをやってもらいます。それら一連の活動は必ず仕事の幅を広げてくれる。正直まだそこまで大きな収益はないですが、この活動がもっと拡充されれば、やがて利益を出せるようになるでしょう。そうなれば、会社としてもうれしい限りです」(大友社長)
 同社の掲げる企業理念は「伝えたい人と知りたい人を安心、確実につなぐ」「利便性とセキュリティを両立させたサービスを提供する」、そして「人々の暮らしを豊かにし、社員の自己実現もはかる」の三つだ。「とらんくまーと」の取り組みが、この三つ目の理念「社員の自己実現」に寄与することは間違いないだろう。
 「当社が担っている事業は知見のアップデートが欠かせません。プロフェッショナルであるために、自身の能力やスキルを高める努力を怠らず、常にチャレンジングであることの先に社員の自己実現があると考えています」と大友社長は話す。
 「社員の皆さんにはぜひ、毎日の仕事の中で自己実現の方法を見つけてほしい。会社はプライベートの時間と両立できる働きやすさの向上に努めるのはもちろん、社員が自己実現をはかれる環境をつくる責務があります」
 「とらんくまーと」をきっかけに、同社は新しいステージに進もうとしている。

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大友 信介
代表取締役社長

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