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日本ホテル<br>社員一人ひとりが、お客さまの満足度をより高めるサービスを追求する

全長330mを超える東京ステーションホテル。お客さまを客室に案内するまでの間に、さまざまな会話が交わされる

日本ホテル
社員一人ひとりが、お客さまの満足度をより高めるサービスを追求する

JR東日本グループのフラッグシップホテル会社である日本ホテル株式会社。東京ステーションホテルをはじめ、多くのホテルを運営する同社が大切にしていることは何か。そこで働く人たちの思いを聞いた。

ホテルだからこそ多様なニーズに応えられる

 首都圏を中心にラグジュアリーホテルの「東京ステーションホテル」や「メズム東京、オートグラフ コレクション」「メトロポリタンホテルズ」、宿泊特化型の「JR東日本ホテルメッツ」など、さまざまなタイプのホテルを展開する日本ホテル株式会社。
 このうちホテルメトロポリタン(東京・池袋)は、都心の一等地にあるシティホテルとして、開業から40年近い歴史を持つ。同ホテル宴会部婚礼支配人の渡辺智子さんは、「ここ最近、当ホテルだからこそできる、きめ細かなサービスとは何かについて、考える機会が増えています」と話す。

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ホテルメトロポリタン 宴会部婚礼支配人
渡辺智子さん

 婚礼では、2020年からのコロナ禍のため、結婚式のキャンセルや延期せざるを得ない時期があった。そんな中でも渡辺さんたちは、「入籍は人生の一大イベント。通常の結婚式は難しくても、何か記念になることを新郎新婦にご提供できないだろうか」と思いを巡らせた。そこで提案したのが、フォトウエディングや、親族だけの少人数での挙式の後にレストランで食事をするといったプランだった。また「本当は地方で暮らしている祖父母を結婚式に招きたいのだが、コロナのことを考えると諦めたほうがいいのだろうか」といった悩みに応えて提案したのは、池袋の披露宴会場と、ホテルメトロポリタン盛岡や山形に披露宴会場を設けて、オンラインでつなぐことだった。
 「コロナ禍での経験を通して改めて気付いたのは、当ホテルにはお客さまのご希望に合わせた多様な結婚式を提供できる設備が整っているということでした。チャペルもレストランも写真室もありますし、宴会場も大小そろっていますからね。コロナ後もお客さまのニーズの多様化は進んでいます。私たちがお客さまの希望や事情にどれだけしっかりと耳を傾け、いかに思いに寄り添ったプランをご提案、ご提供できるかが、今後より大切になってくると思います」

東京のホテルの中でも最初に名前が挙がる

 コロナ禍の打撃を受けたのは婚礼部門だけではない。宿泊部門、特に海外からの宿泊客は一時期激減した。「私たち本来の業務よりも、国内向けの法人営業のお手伝いが中心になっていた時期もありました」と振り返るのは、営業部インターナショナルセールスマネージャーの新井治道さんだ。

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営業部インターナショナルセールスマネージャー
新井治道さん

 業務内容は、インバウンド向けにホテルや鉄道の手配等を手がける国内のランドオペレーターや、海外の旅行代理店との連携を密にすることで、ツアー客の自ホテルへの誘客に結び付けていくというもの。新井さんが担当しているのは、東南アジア地域だ。
 新井さんは海外との往来がストップしていた時期にも、各国の旅行代理店に電話やメールなどでこまめに連絡を取り続けていた。
 「東南アジアには社員数が数名程度の小さな代理店が多く、お付き合いしているのは全部で70社ぐらいになると思います。どんなに小さな会社とも、関係をおろそかにしないというのは、私たちがモットーとしていることです」
 新井さんによれば、現地の方々の間では、ホテルメトロポリタンは東京のホテルの中でも最初に名前が挙がるホテルの一つだという。「これは私の先輩たちが、長年にわたって現地営業を続けてきてくれたおかげです」と語る。
 コロナが一段落した22年秋より、再びインバウンドは増加傾向にある。東南アジアからも多くのツアー客が、ホテルメトロポリタンをはじめとした同社のホテルに宿泊するようになっている。
 「うれしいことに私が取引している旅行代理店は、どこも倒産することなくコロナ禍を乗り越えました。今は忙しくて大変ですが、心地よい大変さです」

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何よりも重視するのはお客さまに共感すること

 同社のホテルの中でも最も古い歴史を有するのが、東京駅丸の内駅舎内に位置する東京ステーションホテルだ。開業は、東京駅開業翌年の1915年のこと。日本のホテルの中でもまさに唯一無二の存在であり、「お客さまの宿泊理由で一番多いのも、このホテルを一度体験してみたかったというものです」と、宿泊支配人の大谷潤さんは語る。

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東京ステーションホテル 宿泊支配人
大谷潤さん

 同ホテルでは、備品や用品について、できるだけストーリーがあるものを採用しているという。例えば客室に置いている茶器は佐賀県の鍋島焼。これは東京駅を設計した辰野金吾が佐賀県出身であることを理由としている。
 また、2012年の再開業時にスタッフ自らが話し合い創り上げた「Core Value」という価値観を何より重視している。「お客さまに画一的なサービスを提供するのではなく、お客さまの思いに共感するところから、おもてなしを始める」という考えだ。お客さまがこのホテルに泊まる理由や期待するサービスは、それぞれ異なるからだ。
 「このホテルは駅舎なので、客室が横に長く並んでおり、客室廊下がとても長い。ですからスタッフがお客さまを客室へとご案内する間にいろいろな話ができ、お客さまを知ることができます。そのようにして得られた情報は、関わるスタッフ全員で必ず共有するようにしています」
 例えば、お客さまとの会話の中で、子どもが志望校に合格したお祝いのために、親子で泊まっていることが分かったとする。そんなときには翌朝の朝食ブッフェの会場に「おめでとうございます」と記したプレートを用意しておく。こうしたさりげないおもてなしが、心をつかみ、多くのファンを生む背景となっている。

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重要文化財内にある東京ステーションホテルは見どころも多く、お客さまからの質問に答えられるよう、日々精進している

「あってもいいな」は思い切って切り捨てた

 長い歴史を持つ東京ステーションホテルとは対照的に、同社の中で最も新しいホテルブランドが、東京・赤羽や田端に開業したホテルB4Tだ。
 B4Tの特徴は、予約からチェックイン、チェックアウトまでの手続きがスマートフォンとSuicaをはじめとした交通系ICカードで完結するというもの。リモート接遇により、お客さまに困り事が生じたときにはチャットやビデオ通話で対応する。省人化等のコスト削減によって、リーズナブルな価格で利用できる点も魅力となっている。
 B4Tがターゲットにしたのはデジタルを使いこなす層。この層は手厚い対面サービスより、むしろセルフで完結するサービスに心地よさを感じるのではないかという仮説に基づいて、コンセプトを構築していった。
 「B4Tは、新しいタイプのホテルだけに、従来のホテルの常識をいかに捨て去るかがカギとなりました」と、B4Tの立ち上げでリーダーを務めた開発推進部開発グループ課長代理の十楚(じゅうそ)晃一郎さんは語る。
 そんな中で、ホテルB4Tインフォメーションセンター支配人の畑光範さんは、「『あってもいいな』は、思い切って切り捨てることにしました」と振り返る。
 例えば多くのホテルでは、客室にウェルカムドリンクとしてミネラルウォーター等を置いている。だがB4Tでは、「あってもいいかもしれないが、なくてもネガティブな印象にならない」と判断して取り入れないことにした。
 ただし徹底的にスリム化を図る一方で、デザイン性の高い家電を各室に配置するなど、デジタルネイティブ層に訴求できると判断したサービスについては、積極的に導入していった。同じくB4Tの立ち上げに関わったJR東日本ホテルメッツ本部企画・開発グループ開発・施設チーム主任の比羅岡さくらさんはこう話す。
 「3人部屋にはプロジェクターを設置しています。若い世代のお客さまが友達と泊まったときなどにプロジェクターがあったら、みんなで好きなアーティストのライブ映像を観るなどして、きっと盛り上がるはずだと考えたのです」
 仮説は当たっていた。B4T赤羽では、最も先に予約が埋まるのはプロジェクターがある部屋だからだ。またその他の客室についても、赤羽・田端共に、開業以来高い稼働率を維持している。

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(右から)開発推進部 開発グループ 課長代理 十楚晃一郎さん、JR東日本ホテルメッツ本部 企画・開発グループ 開発・施設チーム 主任 比羅岡さくらさん、ホテル B4Tインフォメーションセンター 支配人 畑光範さん

優れた挑戦をした社員を毎月社長が表彰する

 こうして見ていくと、同社ではさまざまなタイプのホテルを展開しているが、共通するのは、社員一人ひとりが、どうすればお客さまの満足度をより高めるサービスを提供できるかを常に追求していることだ。里見雅行代表取締役社長も「当社として最も大切にしているのは、お客さまからの信頼と信用を高めることです」と話す。
 同社では、旅行ウェブサイトの口コミなども含めて、お客さまからのあらゆる声を把握し、サービスの改善に生かしている。また施設・設備や、お客さまに提供する食事等の面での安全・安心の実現を徹底。さらには食品ロス削減などの環境対策も重視している。
 「人財育成にも力を注いでいます。優れた人財がいることは、ホテルの競争力を構成する重要な要素の一つとなります。社員が成長する上で大きいのは、自ら考えて新しいことに挑戦する経験を積んでいくことです。そこでコロナ禍でお客さまが少なくなった時期より、たとえ小さなことでもいいので、ホテルの価値向上につながる挑戦を行った社員を毎月表彰する『チャレンジアワード』という取り組みを始めました」
 一方で同社では近年、ホテルメトロポリタンを鎌倉や川崎、羽田で開業するなど、出店戦略も積極的に推し進めている。同社は人財を競争力の源泉としながら、さらなる飛躍を遂げようとしている。

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里見雅行
代表取締役社長

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